高砂市の自然

更新日:2023年11月16日

高御位山系の自然

高御位山系は、凝灰岩が露出する丘陵地です。

むき出しの岩場に、乾燥した砂、日当たりのよい急斜面というのが特徴です。

観察にお出かけの際には、トレッキングシューズなどの歩きやすい靴をお勧めします。

また、岩場であるため高い樹木が育ちにくく、山頂に向かうにつれ日陰になる場所が少ないです。

日差し対策や水分補給にも十分ご注意ください。

平成28年10月15日「知る・見る・歩く たかみくらの岩場&ため池」

 高御位山系の丘陵地の草花を観察するこの観察会は、岩場やため池に生きる希少な植物について専門家の解説を聞き、歩き、知っていただくイベントです。

最後には、山火事や人の営みが植生物に与える影響について、参加者のみなさんと一緒に考えます。

この日は、午前10時に市ノ池公園に集合します。

青空が広がる、絶好のハイキング日和。

まず、姫路市立手柄山温室植物園園長の松本先生から観察会の説明を受けてから出発します。

みどりの相談所前ウッドデッキスペースにて、観察会の参加者たちを前に説明する松本修二先生の写真

観察場所までは、馬の背登り口から歩いて登ります。

岩肌の急斜面を一列になって登っていく参加者たちの写真

急斜面で、岩が露出しているため、表面に保水してくれる水は少なく、乾燥しています。

表面は乾燥した岩場ですが、地中は岩の性質から水分が意外に多いそうです。

このため、この岩場ならではの希少な植物を観察することができるのです。

高御位山の岩場に生えているガンピの写真

↑和紙の原料となるガンピが自生しています。

何気なく登っている岩場の足元にも、先生の解説によりいろんな珍しい植物を見ることができます。

山を登りますので、途中、何度か足を止め、高砂の景色も楽しみながら先生の解説を聞きます。

参加されている方からの質問も積極的です。

高御位山にて小型拡声器を使いながら参加者たちに話をする松本先生の写真
急な斜面の岩肌にしゃがんで座る参加者たちの写真

レッドデータ掲載の植物も見つかります。

乾燥した岩場を観察した後は、下山途中で湿地に生息する植物を観察します。

高御位山系では、乾燥地帯と湿地帯の植物を見ることができます。

ここには食虫植物も自生していて、大人もこどもも興味津々です。

木の根元に生えている植物をしゃがんだり、腰をかがめながら見る子供たちの写真

そして、高御位山系の山すそにあるため池に移動し、植物の観察を行いました。

ため池のほとりに集まって松本先生の話を聞く参加者たちの写真

 市ノ池に生息する外来種について解説を聞き、自生する生物の保全の難しさや、すでに生態系の攪乱が始まっていることを聞き、あらためて「自然環境をまもる」ことの大変さを学びました。

みどりの相談所内に長机を並べて座っている参加者たちに説明をする松本先生の写真

みどりの相談所にもどり、観察会の最後に振り返りを行います。

ここでも参加した皆さんからの質問をいただき、充実した自然観察会となりました。

この日観察できた植物

イブキシモツケ、オオヤマジソ、ガンピ、テリハノイバラ、ネズ、ヒサカキ、ヒメハギ、リュウノウギク、ヨメナなど

平成28年5月28日「たかみくら おどろきの植物」

高御位山系にのぼって草花を観察するこのイベント。

季節的にお勧めなのは、5月から6月にかけての新緑の芽吹きの季節です。

花も咲き、観察に適した時期だそうです。

午前10時、市ノ池公園に集合し、約2時間の山歩きをした後、市ノ池公園に戻ってきます。

この日、姫路市立手柄山温室植物園園長の松本先生が、出発前に皆さんにサプライズでご紹介くださったのは、市ノ池公園内で捕獲した「カスミサンショウウオ」です。

みどりの相談所前ウッドデッキスペースにて、小型の拡声器を手に参加者たちにイベントの説明をする松本先生と、それを聞く参加者たちの写真

環境省レッドデータに掲載されているこの種も、市ノ池公園内に自生しているそうです。

さて、簡単なコース説明を聞いた後出発します。

この日は、あいにくぽつぽつ雨も降るような曇り空ですが、足元に気をつけながら岩場を登ります。

トレッキングポールを片手に急な岩肌を登る参加者の写真

高御位山系は、このような凝灰岩がむき出しの丘陵地です。

表面は保水してくれる土が少なく、乾燥しています。雨が降るとすぐに滑りそうです。

こんな乾燥した岩山に、どうして草花が育っているのでしょうか。

実は、この岩の性質に秘密があり、岩と岩の隙間に水分があり、そこに根を張り、草花が育っているそうです。

岩肌の裂け目に1本だけ生えている植物の写真

↑このように。

特に夏場は雨が降る日が極端に減るし、日差しは厳しいし、岩ばかりの山の上で植物がどこから水を得るのか不思議でしたが、こうやって育っているのですね。

高御位山の上で資料を見ながら説明をする松本先生と、それを聞く参加者たちの写真
山の岩肌に立って、ため池を眺める参加者たちの写真

足を止めながら、要所要所で希少な植物についての解説を受けます。

この風景は、高砂らしい豊かな緑とため池。これもまたいいですね。

次の観察場所は、岩場だった山を下り、山すその湿地帯に向かいます。

ここにもこの環境に適した植物が自生していました。

山すその湿地帯に生えている植物をかき分けながら説明をする松本先生と、それを聞く参加者たちの写真
山すその湿地帯に自生する植物に顔を近づけながら観察する参加者たちの写真

このエリアでは、食虫植物が多くみられ、花の見ごろを迎えていました。

観察後には、松本先生の解説を聞き、参加者のみなさからの質問を受けました。

山火事の影響、生物の多様性の保護、外来種に関する情報など、今後の自然環境への取り組み方を考える内容となりました。

この日観察できた植物

岩場の植物
高御位山の岩場に生えているテリハノイバラの写真。白い花が咲いている。

テリハノイバラ

高御位山の岩場に生えているガンピの写真

ガンピ(和紙の原料)

御位山の岩場に生えている絶滅危惧種であるウンヌケモドキの写真

ウンヌケモドキ(絶滅危惧種)

高御位山の岩場に生えているサルトリイバラの写真

サルトリイバラ(柏餅の葉)

高御位山の岩肌が露出している所に生えているヌルデの写真

ヌルデ(ウルシの仲間)

高御位山の岩場に生えている絶滅危惧種であるオオヤマジソの写真

オオヤマジソ(絶滅危惧種)(葉に強い香りがある)

湿地の植物
高御位山の山すその湿地帯に生えているニガナの写真

ニガナ

高御位山の山すその湿地帯に生えている絶滅危惧種であるイチモリソウの写真

イチモリソウ(絶滅危惧種)(食虫植物、白い花)

高御位山の山すその湿地帯に生えているトウカイコモウセンゴケの写真

トウカイコモウセンゴケ(食虫植物、ピンク色の花)

高御位山の山すその湿地帯に生えているノグサというカヤツリグサ科の植物の写真

ノグサ

高御位山の山すその湿地帯に生えているホラシノブの写真

ホラシノブ

高御位山の山すその湿地帯にコケ類と共に生えているタツナミソウの写真

タツナミソウ(青い花)

高御位山の山すその湿地帯に生えているソクシンランの写真

ソクシンラン

など。

平成27年10月10日「たかみくらの岩場・市ノ池の水辺で生きる草花」

午前10時に市ノ池公園で集合し、姫路市手柄山温室植物園園長の松本先生から注意事項や今回の観察のポイントを聞きます。

この時期は、高御位山系では、暑い過酷な夏が終わり、花や実の季節だそうです。

どんより曇り空でしたが、気温は快適。

参加者の皆さんと一緒に2時間、山を登り、歩き、観察をします。

馬の背登り口から山を登ります。

しばらく歩くと傾斜のある岩場へ。

この岩場は、特徴のある岩場です。

高御位山の岩肌の上で小型の拡声器を手にしながら話をする松本先生とその話を聞く参加者たちを下から見上げた写真

凝灰岩、つまり灰が固まってできた岩ですので、小さな小さな穴があいていて、その小さな穴で水分をためているそうです。

植物は岩の下の方に根を伸ばし、水分を得ているとのこと。

一見何もなさそうな岩場ですが、そんな特徴があるのですね。

麓を見下ろす場所で松本先生の話を聞く参加者たちの写真

参加者のみなさんからも質問があります。

この後、岩場を下り、ため池の一つである市ノ池に向かいます。

市ノ池のほとりで池を眺める松本先生と参加者たちの写真

「生物多様性の保全」というと、どんなことを思い浮かべますか。

大雑把にいうと、そこにある地域の環境に合わせて生きてきた固有の生物や植物を、絶滅から守ること、でしょうか。

ため池の植物を観察しながら、家で飼いきれなくなった生き物(カメ、メダカ等)や、いらなくなった水草を、生活の身近にあるため池や水路に「はなしてあげる」ことで、進んでいる、外来生物による生態系の攪乱について、松本先生から解説を聞きます。

ここ、市ノ池でも、外来の植物があちこちに入り込んでしまい、この地域特有の生態系を乱していることがわかりました。

決して、外から持ち込まないこと!お願いしますね。

オニバスが浮かぶ池の前にしゃがみながら話をする松本先生と、池の周りに立ってその話を聞く参加者たちの写真

「オニバス」の解説を聞きます。オニバスは大きな葉の表面に、鬼のツノのような突起があることが特徴です。

花を咲かせることは、なかなかないそうです。

ここではため池の水を抜いて乾かす「かいぼり」の自然界における重要性について聞きます。

ため池が果たす自然への役割を学びました。

この日観察できた植物

高御位山に生えているネズの雌花の写真

ネズ

高御位山に生えているノイバラの実の写真。実はまだ熟していない。

ノイバラ

高御位山に生えているヤマラッキョの蕾の写真

ヤマラッキョ

高御位山に生えている野生種のキキョウの花の写真。野生種のキキョウは絶滅危惧種に指定されている。

キキョウ(絶滅危惧種)

このほか、オヤマジソ(絶滅危惧種)、スゲ、オケラ、ヌルデ、ガンピ、ガガイモ、トサオトギリ(絶滅危惧種)など。

中でもトサオトギリは、環境省のレッドデータでも最も絶滅の危機に瀕しているという評価があります。

どこに育っているかは、その希少性により詳しくは説明できませんが、日本でも高砂の、この高御位山系でしか自生していないのではないかと言われています。

山火事の後

平成23年1月、高御位山系では大規模な山火事が発生しました。

この日観察した場所も、焼けた場所と焼け残った場所の境界。

これまでも山火事を幾度となく乗り越えてきた高御位山系ですから、自然の回復力で植物や樹木が育っていました。

あの山火事により、日を遮っていた樹木がなくなったことで、日当たりができたことで、再び芽吹いた植物もあったそうです。

平成27年6月6日「たかみくらの岩場で生きる草花 山火事のその後」

午前10時、前日までの雨があがり、青空が広がる市ノ池公園に集合です。

市ノ池公園にて、イベントの説明を受ける参加者たちの写真

晴れているといっても、前日までの雨で足元は滑りやすいはず。

皆さん、登る際には十分お気を付けくださいね。

急な斜面の岩肌を登る参加者たちを下から見上げた写真

この日は、申し込みを多数いただき、ご希望の方全員をご案内することができませんでした。

高砂の山、高砂の植物にご関心をお持ちの方がたくさんいらっしゃるのは、高砂市の自然環境を守り引き継ぐことを考えたとき、大変心強いです。

高御位山にて、植物の写真が並んでいる資料を見ながら先生の説明を聞く参加者たちの写真

山を登りながら、先生から解説を受けます。

オオヤマジソは、一時期「幻の植物」と言われたこともある貴重な植物ですが、高御位山系の岩場のあちこちに自生しています。

高御位山の岩場に自生しているオオヤマジソを接写した写真

要所ごとに立ち止まり、解説や質問があります。

ため池があり、木々の緑が見えるこの風景もすばらしい自然環境です。

高御位山の、ため池を一望する場所で先生の話を聞く参加者たちの写真
高御位山に自生するキキョウの写真。花は咲いていない。

↑キキョウです。

9月には美しい青い花が咲きそうですね。

キキョウも園芸種が園芸店に出回っていますが、このように自生している原種は珍しく、絶滅が危惧されています。

高御位山系も頂上付近になると、一日の寒暖の差があり、深い青い色が出るそうです。

花が咲くのが楽しみですね。

生態系を乱す原因になりますので、決して園芸店で買い求めたキキョウなどの草花や樹木の苗を植えないでくださいね。

高御位山の岩肌が見える場所に生えているウンヌケモドキの写真

↑ウンヌケモドキは日当たりのいい場所に自生していました。これも絶滅危惧種だそうです。

山を下りていく途中、湿地性の植物の観察ができるポイントがあります。

高御位山の山すそにある湿地帯の一本道で脇に生えている植物を観察する参加者たちの写真

ここでは、食虫植物のトウカイコモウセンゴケや、同じく食虫植物で絶滅危惧種のイシモチソウが自生しています。

高御位山の湿地帯に生えているトウカイコモウセンゴケの接写写真

↑これはトウカイコモウセンゴケです。

ピンク色に見える葉からの突起物は、粘り気があり、そこで小さな虫を捕らえるそうです。

あまり土に栄養がない分、こうして栄養をとろうとしているのですね。

6月がピンク色に咲く花の季節だそうです。

山火事のその後

高御位山の山火事の跡が残る場所を撮影した写真。途中で折れた黒焦げの木も写っている。

平成23年1月に起きた大規模な山火事。

植物観察を行った場所では、どころどころで焼け焦げた跡がありました。

この険しい山を、参加者の皆さんと一緒に登り、焼け焦げた跡を見ると、

あの時の山火事を消すために、真冬の寒い時期、昼夜を問わず水を持って山にのぼり、消火活動を行ってくださった方のご苦労を感じました。

火事から数年が経ちました。

植物の世界はどうだったかというと、日を遮っていた樹木がなくなったことで芽吹いた草花や、焼け跡から芽吹く樹木も観察できました。

また、黒く焦げた樹木も、やがて土にかえり、栄養となるそうです。

焼け焦げた山火事の後は、決して景観的には良いものではありませんでしたが、自然界ではゆっくりと回復を果たしていました。

加古川河口干潟の自然

兵庫県下で最大の河川、加古川が播磨灘の海へ注ぎ込む最下流に広がるのが、加古川河口干潟です。

まず、干潟は公園ではないため、立ち入る際には十分に危険を想定し、各自で備えを万全になさってください。

海の潮の流れ、潮位、加古川の水量の影響を大きく受ける場所です。

このため、台風や大雨の時はもちろん、雨があがっても、立ち入る際には慎重な判断が必要です。

また、砂地に見えても湿っている場所は泥地ですので、足をとられたりするため、大変危険です。

日陰はなく夏の日差しは大変厳しい場所ですし、内容物のよくわからない漂着物もあります。

干潟へ立ち入る際には、十分ご注意ください。

平成28年7月16日「加古川河口干潟の観察会」

夏休み直前の土曜日、心配していた天気は回復し、潮もよく引いた時刻、13時30分から、干潟の観察を開催しました。

干潟の観察には干潮の時間帯がおすすめですので、潮の満ち引きを調べてから観察の日を決めてくださいね。

この日の参加者は約20名。

午前中の清掃活動の成果でしょうか、キレイになった干潟の観察開始です。

海辺の環境改善のため、干潟の研究をしている市民グループ「ガタガール」代表の前田さんから注意事項や干潟についての説明を受けます。

土手に設けられた階段に座りながら階段下の前田真里さんの説明を聞く参加者たちの写真
参加者たちが座る土手の階段下に設けられたイベント用テントの前でスタッフが持っているパネルを使いながら話をする前田真里さんの写真

この後、加古川河口干潟に向けて出発です。

傾斜のある土手を、足元に気を付けながら干潟におりていきます。

今日のプログラムは、

  1. 干潟観察(フィールドビンゴ)
  2. アサリの水質浄化実験
  3. カニ釣り
  4. チゴガニ観察
  5. ハクセンシオマネキ観察

をテーマに、埋立前の高砂の海岸線を想像しながら、干潟について学びます。

干潟観察(フィールドビンゴ)

干潟を実際に歩き、干潟にあるものを見つけ出すゲームです。

配られたカードにはマス目上にキーワードがあり、それに当てはまるものを探します。

見つけたものをスタッフに見せて、ビンゴを目指します。

干潟にはどんなものが落ちていましたか?

配られたカードに書かれている事柄を参考に干潟にあったものを探す子どもの参加者たちの写真
子どもの参加者が配られたカードを参考に見つけてきたものを確認するスタッフの写真

アサリの水質浄化実験

コメのとぎ汁をつかって、アサリが持っている水の浄化作用を観察します。

観察のはじめに、コメのとぎ汁に塩分調整をした水にアサリを入れ、どれだけ水が透明になったのかを観察するものです。

アサリなどの貝には、海を浄化する役割があるんですね。

米のとぎ汁が入った2本の大きな瓶の前にしゃがんで透明度を見る子供たちの写真。貝が入っている方の瓶は濁りが薄くなっている。
参加者の子どもたちにパネルを見せながら実験の説明をするスタッフの写真

カニ釣り

割りばしとひもで、干潟にいるカニを釣って、その動きを観察します。

1年前の平成27年の夏には、たくさんいたアシハラガニも今年は数が少ないようですが、さすが雑食で食欲旺盛なアシハラガニ。

次々と釣れます。

くれぐれも足を泥にとられないように気を付けましょう。

釣ったアシハラガニをよく観察し、オスとメスの見分け方を教えてもらいます。

指を挟まれないように気を付けながら、アシハラガニをひっくり返すと、お腹の違いでオスとメスがわかります。

干潟の水辺にしゃがんで割りばしの先に紐を垂らしカニを釣ろうとしている子供たちと、その後で腰を曲げて前の子どもと同じ目線でそれを見守るスタッフの写真
干潟の水際に沿って並んで座ってカニを釣ろうとしている参加者たちの写真。奥の葦が繁っている水辺にはスタッフが水面を観察している。

チゴガニ観察

土手を干潟に下りて行ったすぐのところには、小さなチゴガニがたくさんすんでいます。

今回はこのチゴガニを観察します。

静かにじっとして、チゴガニの動きに目を慣らしてきます。すると見えてくるチゴガニたち。

集団でいるところに、石を投げ込んで刺激を与えると、チゴガニが一斉に両方のハサミを上に振り上げます。

チゴガニは1センチメートルほどの小さなカニで、干潟に巣穴を掘って、集団で暮らしています。

両方のハサミは白色をしていて、それを振り上げる動き(ウェービング)は、オスからメスへの求愛行動ではないかと言われています。

求愛行動だけではなく、敵が来た!とか敵への威嚇、敵の襲来を周囲に知らせるためにハサミを振り上げているのではないかとも考えられています。

チゴガニは、小さいがゆえに外敵から守るため、恋敵たちと集団生活を送っているのですね。

ライバルと求愛合戦をしているかと思えば、集団行動もしていたり。

おもしろいカニです。

水が引いた砂地にあるチゴガニの巣穴を、乾いた砂地から遠巻きに眺める参加者たちの写真

ハクセンシオマネキ観察

加古川河口干潟にすんでいる、それも数年前はたくさんいたという目撃証言があるにもかかわらず、昨年平成27年の観察会では全く見つからなかったのが、ハクセンシオマネキです。

今回は、観察することができました。といっても「たくさん」ではなく、数匹ですが。

ハクセンシオマネキを前から撮影した接写写真。大きなハサミを振り上げている。
ハクセンシオマネキを甲羅の側から撮影した接写写真。大きなハサミは下ろしている。

ハクセンシオマネキは、繁殖期を迎えると、オスが白い大きな片方のハサミを振る行動で知られていますね。

甲羅の幅は約2センチメートルと言われていますが、この日は2センチメートルもない小さなハクセンシオマネキでした。

この白い大きなハサミが、白い扇のように見えるということから「白扇(ハクセン)」とついたそうです。

環境省のレッドリストでは、絶滅の危険が増大している種として評価されています。

求愛行動と考えられているハサミを振る行動は、6月から8月の日中の干潮時に観察できます。

一生懸命に大きなハサミを振る姿は、とてもかわいらしいものでした。

ハクセンシオマネキの巣穴を取り巻くように座って観察する参加者たちの写真。

もちろん、ハクセンシオマネキを観察するときも、静かにじっと、気配を消すようにしていないと、巣穴からは出てきてくれません。

とても臆病な性格のカニが多いようです。

この河口干潟は、カニなどたくさんの生き物がいるため、冬になるとそれらをエサとして求め、いろんな種類の野鳥が飛来する場所としても有名だそうです。

干潟は毎年形を変える!

昨年と比べると、干潟の地形も、生き物の種類も数も、全く別の場所に来てしまったかのように違った河口干潟。

理由はだれにもわからないのですが、それだけ、海や川の水の影響を大いに受ける場所なのですね。

今回は、海辺の掃除が終わってからの観察となり、比較的ゴミに出くわすことは少なかったですが、まだまだ漂着ゴミがあります。

高砂市には、埋立で自然海岸線はなくなりましたが、こうして残っている貴重な干潟から昔の海岸線を想像することができます。

私たちの身近にある、たくさんの生き物を豊かにはぐくみ、水質浄化作用もある干潟を、この先も大切に守っていきたいものです。

平成27年7月12日「加古川河口干潟の観察会」

快晴でしたが蒸しっとした暑さのなか、午前10時から開催しました。参加者は約30名。

海辺の環境改善のために、干潟づくりなどの活動をしている市民グループ「ガタガール」代表の前田さんのお話から観察会スタートです。

土手に設けられた階段を座席代わりに座る参加者たちの前でスタッフが持つパネルを使って話をするガタガール代表の前田真里さんの写真

 いよいよ観察場所へ移動します。

傾斜のある土手を下り、潮が引いた加古川河口干潟の観察ポイントへ向かいます。

土手を下りて干潟の水辺に向かう参加者たちの写真

今日のプログラムは、

  1. ヨシ原探検
  2. カニ釣り
  3. 干潟観察

の3つの観察ポイントで、ガタガールの皆さんから解説を聞きながら、干潟を学びます。

ヨシ原探検

ヨシ原とは、干潟の陸に近い場所に、葦(ヨシ)と呼ばれる植物(アシと呼ばれることもある)が茂る湿地です。

そのヨシ原のなかを歩き、生き物を探しました。

泥に足をとられそうになりながら、干潟の感触を足で体験しました。

脇に水が流れるヨシ原が切れた場所で泥地を観察する参加者たちの写真

カニ釣り

葦(ヨシ)の葉を竿にして、カニを釣ってみて、カニの動きを観察します。

ガタガールの方が準備してくださった葦(ヨシ)の葉を竿にして、参加者みんなでカニ釣りに挑戦しました。

干潟に流れる小川に葦の竿を垂らしてカニ釣りをする子供たちの写真

正直、葦(アシ)でカニが釣れるのかと思っていましたが、食欲旺盛なアシハラガニが、釣れる釣れる。

予想以上でした。

雑食なのかどうか、試しにチクワをくくりつけると、あっという間にアシハラガニが釣れました。

アシハラガニが食べる動きなどを、間近で見ることができました。

干潟に流れる小川にて、葦の竿で釣り上げたカニを見る子供の写真

干潟観察

テントの下に腰を下ろし、物音を立てないよう、できるだけ気配を消し、静かに干潟を見ます。

こんなにもいたのかと驚くほどのカニ、カニ、カニ、カニが見えてくるではありませんか。

臆病なカニたちは、気配を察すると姿を隠してしまいますが、しばらくじっとしていると、動き始めます。

見過ごしてしまいそうな小さい貝もよく見ると動き回っているではありませんか。

そんな小さな生き物たちの動きを静かに観察しました。

干潟の砂地に張った日よけテントの下に広げたブルーシートに座る参加者たちの写真

ヨシ原とは

葦(ヨシ)は水辺に生える植物で、すだれ材料としても有名で、日本全国で見ることができます。

土の中の地下茎という根のようなものを広げて大きくなり、草丈は2メートルを超えます。

ヨシ原は、水質浄化や、生態系保全、景観形成、浸食防止など、重要で様々な働きを担っています。

自然がよく残された日本の河口域では、広大なヨシ原が広がっていましたが、近年は海岸線の埋立等により減少しています。

加古川河口干潟にすんでいる生き物

加古川河口干潟では、アシハラガニの他にもヒメアシハラガニ、ヤマトオサガニ、チゴガニ、ウミニナなどが観察できます。

希少なカニもたくさんいて、ハクセンシオマネキ(左右一方の白いハサミを振って求愛行動をする姿が有名です)もいるそうですが、今回は観察できませんでした。

下の写真は、今回、あちこちでいくつも観察できたアシハラガニです。

干潟の泥地にいたアシハラガニを前から撮影した接写写真

たくさんいたカニたちは、水に含まれている有機物や微生物をすくいとるように食べています。

その行動が水を浄化する働きを持っているというのは驚きです。

埋立によりどんどん減少していった干潟やヨシ原。

しかし、こんなにも素晴らしい場所が高砂市には残っています。

この先もずっと大事に守っていきたいものです。

この記事に関するお問い合わせ先

生活環境部 環境経済室 環境政策課

〒676-8501
兵庫県高砂市荒井町千鳥1丁目1番1号

電話番号:079-443-9029

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